高齢者の睡眠と寝具の工夫とは?解説

「歳をとってから、夜中に何度も目が覚めるようになった」。そんな声は本当によく聞きます。結論から言えば、高齢者の睡眠の悩みは、寝具の工夫でかなり和らげられる部分があります。ポイントは大きく三つ。マットレスや敷布団を「沈み込みすぎず、底つきしない」硬さに整えること、掛け寝具を軽く保温性の高いものにして寝返りの負担を減らすこと、そして寝室の温度を18〜22度、湿度を50〜60%に近づけることです。加齢で睡眠が浅く短くなるのはある程度自然な変化とされますが、寝具と環境を見直すだけで「朝までぐっすり」に近づく人は少なくありません。正直なところ、薬に頼る前にまず試してほしいのがこの三点です。この記事では、なぜ変化が起きるのかという仕組みから、今夜すぐ試せる具体策までを順にお伝えします。

目次

高齢者の睡眠はなぜ変わる?まず知っておきたい全体像

年齢を重ねると、睡眠のリズムそのものが変化します。ここを理解しておくと、「自分だけがおかしいのでは」という不安がずいぶん軽くなります。

加齢で睡眠が「浅く・短く」なる仕組み

一般に、深い眠り(ノンレム睡眠の徐波睡眠)は20代をピークに少しずつ減り、高齢期にはかなり少なくなるとされています。そのぶん眠りが浅くなり、ちょっとした物音や尿意、寝返りの痛みで目が覚めやすくなるわけです。実際、70代では夜中に一度も目覚めずに朝を迎える人のほうが少ないともいわれます。また、体内時計が前倒しになることで、夜は早く眠くなり朝も早く目が覚める「朝型化」が進みやすいのも高齢期の特徴とされます。夕方の6時7時に強い眠気が来て、そのままうたた寝してしまうと、肝心の夜に寝つけなくなる、という流れはよくあります。必要な睡眠時間も若い頃より短くなる傾向があり、6時間前後で十分という方も珍しくありません。ですから「8時間眠らないと」と気負いすぎると、かえって布団の中で眠れない時間が増え、それがストレスになる。たとえば夜9時に布団へ入り、朝6時まで9時間横になっていれば、そのうち何時間かは「眠れずに目を閉じているだけの時間」になりがちです。実は、この「眠らなきゃ」というプレッシャーこそが不眠を悪化させる典型的なパターンとされています。

体温リズムと寝具の深い関係

人は眠りに入るとき、手足から熱を逃がして深部体温を下げていきます。この体温の下降がスムーズだと寝つきが良くなるとされます。ところが高齢になると、この体温調整の反応が鈍くなりがち。冷えて眠れない、逆に寝床が蒸れて暑くて目覚める、という両極端が起きやすいのです。だからこそ寝具の保温性と通気性のバランスが若い頃以上に大事になります。よくあるのが、「寒いから」と重い毛布を何枚も重ねてしまうケース。3枚も重ねれば掛け寝具だけで4〜5kgになることもあり、重さで寝返りが打ちにくくなって、血行が滞って腰や肩が痛む、という悪循環に陥ることがあります。手足が冷える方は、毛布を増やすより、まず靴下ではなくレッグウォーマーや薄手の腹巻きで体幹を温めるほうが理にかなっているとされます。

見直すべきは「寝具・環境・生活習慣」の三本柱

睡眠の質は、寝具だけでも生活習慣だけでも決まりません。マットレスや枕といった寝具、寝室の温湿度や光といった環境、起床・食事・運動といった生活習慣。この三つがかみ合って初めて、まとまった眠りにつながります。ケースによりますが、まずは自分で変えやすい寝具と環境から手を付けるのが現実的です。生活習慣は一気に変えようとすると続かないので、あとから少しずつ整えていけば十分だと考えてください。実際、「起床時刻だけは毎日そろえる」という一点を数週間続けただけで、夜の寝つきが安定したという声もあります。

具体的にどうする?寝具選びと手入れ、生活の工夫

ここからは実践編です。今日の夜から、あるいは次の買い替えのタイミングから試せることを、優先順位の高い順にお伝えします。

マットレス・敷布団は「硬さ」で選ぶ

高齢者の寝具選びで最も失敗が多いのが硬さです。柔らかすぎると腰やお尻が沈み込み、寝返りに大きな力が必要になります。筋力が落ちている方ほど、この「寝返りしにくさ」が中途覚醒や腰痛の原因になりがちです。かといって硬すぎると、肩やかかとなど骨の出っ張った部分に圧がかかり、痛みや床ずれのリスクが上がる。目安としては、あおむけに寝たときに背骨がゆるやかなS字を保ち、手のひら一枚分がすっと腰の下に入るくらいがちょうど良いとされます。体重が軽い方はやや柔らかめ、がっちりした方はやや硬めと、体格で調整してください。よくある失敗が、量販店で「低反発が体にやさしそう」と選んで沈み込みすぎ、朝の寝返りがつらくなるケース。高齢の方はむしろ、適度に反発する高反発寄りのタイプが起き上がりやすいことも多いです。もう一つの見落としがちなポイントが、寝床の「高さ」です。床に敷いた薄い布団だと、立ち上がるときに一度深くしゃがむ動きが必要になり、膝や腰に大きな負担がかかります。ベッドなら、腰かけたときに足裏がしっかり床につき、膝がほぼ直角になる40cm前後の高さだと立ち座りが楽だとされます。介護を見据えるなら、あとから高さや角度を調整できるタイプを選んでおくと、将来の負担も減らせます。買い替えの目安は、へたりを感じたら。真ん中がへこんで谷になっていたり、朝に腰が痛むようなら替えどきで、おおむねマットレスで8〜10年、敷布団で3〜5年が一つの区切りです。

掛け寝具と枕で寝返りを軽くする

掛け布団は「軽くて暖かい」が理想です。羽毛布団が代表格で、シングルで1.0〜1.5kgほどと軽く、3〜4kgになりがちな重い綿布団に比べて体への圧迫が少なく、寝返りの邪魔をしません。寒がりの方でも、薄手の毛布を体の上ではなく下(敷きパッドの上)に敷くと、放熱を抑えつつ軽さを保てます。枕は、横向きに寝たときに首の骨が背骨と一直線になる高さが基本。あおむけなら後頭部から首にかけて自然にフィットする、およそ数cm程度が目安です。高すぎると気道が狭くなっていびきや息苦しさにつながることがあります。実は枕は寝具の中でも比較的安く試せるので、合わないと感じたら早めに見直すのがおすすめです。バスタオルを畳んで高さを1cm単位で微調整するだけでも、朝の首肩の軽さが変わることがあります。パイプやそば殻のように高さを足し引きできる中材だと、体調や季節に合わせた調整もしやすいでしょう。

手入れと衛生で「気持ちよさ」を保つ

どんな良い寝具も、湿気とホコリがたまれば台無しです。人は一晩でコップ1杯分(約200ml)、夏場はそれ以上の汗をかくと言われ、その水分は寝具に吸われていきます。敷布団やマットレスは週に1〜2回、風通しの良い場所で立てかけるか、除湿シートを併用して湿気を逃がしてください。晴れた日に2〜3時間の陰干しをするだけでも、布団の中の湿気は目に見えて軽くなります。シーツや枕カバーは週1回の洗濯が理想。ダニやハウスダストはアレルギーやくしゃみの原因になり、夜間の目覚めにつながることもあります。高齢の方は洗濯や布団の上げ下ろし自体が負担になりやすいので、軽い羽毛布団や、丸洗いできる寝具を選んでおくと手入れがぐっと楽になります。マットレスなら、洗える敷きパッドを一枚かけておくだけで、本体を洗う手間をかなり減らせます。

寝室環境と生活習慣、よくある失敗

温度は季節を問わず18〜22度、湿度50〜60%を一つの目安に。冬に暖房を切って寝ると明け方に室温が10度近くまで下がり、その寒さで午前4〜5時ごろに目が覚めることがよくあります。タイマーで明け方に軽く暖まるよう設定すると中途覚醒が減る方もいます。夏は逆に、エアコンを我慢して寝室が28度を超えると寝汗で目覚めやすいので、27度前後で朝までつけたままにするほうが眠りは安定しやすいとされます。生活習慣では、よくある失敗が三つ。一つ目は昼寝の取りすぎで、昼寝は15〜30分以内、午後3時までにとどめるのが無難です。ソファで1〜2時間眠ってしまうと夜の寝つきが崩れます。二つ目は寝る前のトイレ対策不足で、就寝2〜3時間前から水分を控えめにすると夜間頻尿による覚醒を減らせます。ただし脱水は禁物なので、日中はしっかり水分をとってください。三つ目は朝日を浴びないこと。起きたら15分ほど日光を浴びると体内時計が整い、そのおよそ14〜16時間後に自然な眠気が訪れやすくなるとされます。カーテンを少し開けて寝て、朝の光で自然に目覚める工夫も有効です。加えて、寝る前の過ごし方も眠りを左右します。就寝1時間前からは強い照明やスマホ、テレビの光を控え、部屋を少し暗くしておくと、眠りを促すリズムが乱れにくいとされます。ぬるめのお風呂に就寝1〜2時間前に入り、いったん上げた体温が下がっていくタイミングで布団に入ると、寝つきがスムーズになる方も多いです。なお、いびきが激しい、日中に強い眠気が続くといった場合は、睡眠時無呼吸などが隠れていることもあるため、我慢せず医療機関に相談してください。

よくある質問

Q1. 高齢者は何時間眠れば十分ですか?

A1. 個人差はありますが、6時間前後で足りる方も多いとされます。日中に強い眠気がなく元気に過ごせていれば、時間の長さより「昼間の調子」を目安にして構いません。夜に眠れない時間が長いと感じるなら、あえて就寝を少し遅らせて横になる時間を短くするのも一つの手です。

Q2. 夜中に何度も目が覚めます。異常でしょうか?

A2. 加齢で眠りが浅くなり、1〜2回目覚めるのはよくあることです。すぐ眠りに戻れるなら心配しすぎないこと。ただし毎晩3回以上で日中つらい場合や、目覚めるたびに1時間以上眠れない場合は相談を検討してください。

Q3. 敷布団とマットレス、高齢者にはどちらが良いですか?

A3. 立ち座りのしやすさで選ぶのが現実的です。床からの起き上がりがつらい方は、高さのあるベッド+マットレスが体の負担を減らします。膝や腰に不安がある方ほど、この差は大きく出ます。硬さは中程度を基準にしてください。

Q4. 電気毛布は使っても大丈夫ですか?

A4. 使えますが、就寝前に布団を温めておき、寝るときは弱にするか切るのがおすすめです。一晩中の高温は脱水や寝汗を招きやすく、かえって目覚めの原因になることがあります。タイマーで就寝30分後に切れるよう設定すると安心です。

Q5. 枕はどのくらいで買い替えるべきですか?

A5. へたって高さが出なくなったら替えどきで、目安は2〜3年です。朝起きて首や肩がこる、いびきが増えたと感じたら、素材や高さが合っていないサインかもしれません。畳んだタオルで高さを足して楽になるかを試すと、買い替えの判断がしやすくなります。

Q6. 寝具を変えたら本当に眠りは良くなりますか?

A6. 全員に効くとは言えませんが、寝返りのしやすさや温度が整うと中途覚醒が減る方は多いです。まず硬さと軽さ、次に温湿度の順で試すと変化を感じやすいでしょう。数日で判断せず、2週間ほど様子を見るのがおすすめです。

Q7. 眠れない夜はどう過ごせば良いですか?

A7. 20分ほど眠れないなら一度布団を出て、暗めの部屋で静かに過ごし、眠気が来たら戻るのが基本です。スマホの強い光は避け、時計を何度も見ると焦りが増えるので、時計は見ない工夫をしてください。

まとめ

  • 高齢者の睡眠は「浅く・短く」なるのが自然。8時間にこだわらず、日中の調子を目安にする
  • 寝具はまず硬さ。沈み込みすぎず底つきしない中程度を選び、背骨がゆるやかなS字を保つ
  • 掛け布団は軽く暖かく。羽毛など寝返りを妨げないものにし、枕は首がまっすぐになる高さに
  • 一晩コップ1杯の汗を逃がす手入れを。週1〜2回の陰干しと除湿、シーツは週1洗濯が目安
  • 寝室は18〜22度・湿度50〜60%。昼寝は30分以内、朝日を15分浴びて体内時計を整える
  • いびきや強い日中の眠気が続くときは、我慢せず医療機関に相談する

まずは今夜、枕の高さをタオル一枚ぶん調整してみるところから始めてみませんか。小さな一手間でも、朝の目覚めの軽さは確かに変わっていきます。あなたと、そしてご家族の眠りが少しでも心地よいものになりますように。

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このテーマについては、判断の切り口ごとに考え方が分かれます。 以下では、睡眠を考えるうえで代表的な視点を整理しています。

睡眠の質という考え方
寝れない原因の捉え方
睡眠の仕組みと背景理解

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株式会社エスト



岐阜県岐阜市にて、
寝具・インテリア製品の企画・製造・販売を行っています。
日々の暮らしに寄り添う、心地よい商品づくりを大切にしています。



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